不眠は「眠れない」というストレスや、日中の眠気、だるさ、意欲低下などをもたらすだけではありません。近年、睡眠が不足すると生活習慣病の発症リスクが高まり、症状の悪化につながることがわかっています。ここでは、睡眠不足に関連する、気をつけたい4つの病気や不調についてお話ししていきます。
要注意!不眠で起こりやすくなる病気・不調
肥満
睡眠時間が短いと、肥満になりやすいことがさまざまな研究から明らかになってきました。例えば、平均睡眠時間が7~9時間の人と比較して、平均睡眠時間が4時間以下の人の肥満率は約70%も高いということがわかっています。
これは睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン「グレリン」の分泌が増え、食欲を抑えるホルモン「レプチン」の分泌が減少し、過食傾向になるためだと考えられています。
しかも、肥満になると、高血圧や糖尿病といった生活習慣病をはじめ、さまざまな病気が起こりやすくなるため、軽視できません。
高血圧
睡眠中は自律神経のうち、副交感神経が優位になって血圧が下がります。ところが、睡眠不足だと自律神経の切り替えがうまくいかず、交感神経が優位な状態が続きます。血圧は交感神経が優位だと高くなるため、睡眠不足が続くと血圧がなかなか下がらなくなり、高血圧の原因になります。
糖尿病
睡眠不足が続くと血糖をコントロールするホルモン「インスリン」の働きが低下し、血糖値が下がりにくくなるため、糖尿病の発症リスクが高まります。不眠の人はそうでない人に比べて、糖尿病の発症リスクが約2~3倍といわれています。
睡眠時無呼吸症候群
不眠や生活習慣病に関連した疾患に「睡眠時無呼吸症候群」があります。肥満の人に多くみられ、睡眠中にのどの筋肉が緩むと、のどにたまった脂肪で気道がふさがれてしまい、呼吸ができなくなってしまいます。すると、寝ている間に何度も呼吸が停止して、苦しくて目が覚めたり、大きないびきをかく、といった症状が起こるようになります。
無呼吸によって酸素不足が続くと、高血圧や糖尿病、脳血管障害などを引き起こす恐れがあり、注意が必要な睡眠障害です。
健康のためには必要な睡眠時間とは?
ここまで不眠に関連する病気や不調について見てきましたが、では健康のためにはどのくらいの睡眠時間が必要なのでしょうか。
一般的には平均睡眠時間が7時間前後の人が、もっとも死亡率が低くなることがわかっています。睡眠時間は短くても、長すぎても死亡リスクが上がる傾向にありますが、詳しいことはまだ解明されていないのが実状です。ただし、適切な睡眠時間は人によって異なるので、時間にこだわり過ぎず、朝起きたときに「よく眠った」と満足感を得られる睡眠時間を確保するようにしましょう。
睡眠不足は命に関わる重大な問題
現代の忙しい生活のなかで、睡眠時間は犠牲になりがち。しかし、今回お話しししたように、睡眠不足は生活習慣病の引き金となる恐れがあり、命に関わる重大な問題といえます。「たかが睡眠不足」と軽く考えるのは危険です。日頃から睡眠不足が続かないように注意し、睡眠に何らかの変調やつらさを感じる場合は、早めに医師に相談してください。
<参考>
内田直『おもしろサイエンス 安眠の科学』日刊工業新聞社、2013年
内山真『不眠と不安に打ち克つ本』アーク出版、2004年
内山真『睡眠障害』家の光協会、2003年
内山真(睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会)編『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』じほう、2012年
田中匡『快眠と不眠のメカニズム』日刊工業新聞社、2007年
アステラス製薬・サノフィ 快眠推進倶楽部
MSD 快眠ジャパン
厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
武田薬品工業 体内時計.jp
田辺三菱製薬・吉富薬品 スイミンネット
東洋経済新報社 東洋経済オンライン「『寝不足の人』が太りやすくなる3つのワケ」
養命酒製造 健康知識・情報「睡眠が変われば人生が変わる」