寝つきが悪い、よく眠れないといった症状が続くからといって、「不眠症」とは限りません。うつ病の症状として、不眠が現れているケースもあるのです。ここでは、不眠とうつ病の関係について、お話ししていきます。
不眠=不眠症とは限らない?
不眠=不眠症と考えがちですが、そうとは限りません。不眠はうつ病の典型的な症状でもあるため、不眠症だと思って受診した人が、実はうつ病だったというケースも少なくないのです。
「不眠症」とうつ病に伴う「不眠」。両者は不眠という症状は共通していますが、治療法は同じではありません。不眠症の場合は、睡眠薬だけで済むことがありますが、うつ病が原因で不眠が続いている場合、睡眠薬だけではよくならず、抗うつ薬を用いた治療が必要になることがあります。不眠症なのか、うつ病に伴う不眠なのか、両者は区別がつきにくいので注意が必要です。
精神症状があるならうつ病の疑いも
先にも述べたように、「不眠症」とうつ病に伴う「不眠」。両者を見分けるのは容易ではありません。ただ、うつ病の場合は不眠以外に精神症状なども起こります。
例えば、
- 気分の落ち込みといった抑うつ状態が続く
- 何事もやる気が起きず、おっくうになる
- 以前は興味を持っていたことが楽しめなる
- 食欲の低下
上記のような症状がある場合、うつ病を疑ってみた方がいいでしょう。
不眠が続くとうつ病のリスク上昇
また、不眠が続くとうつ病の発症リスクを高まることもわかっています。米国のジョンズ・ホプキンス大学の医学生を対象にした、数十年間にわたる追跡調査では、学生時代に不眠を経験した人は、そうでない人に比べて、卒業後、うつ病になるリスクが高かったという結果が出ています。
このように、不眠はうつ病の典型的な症状であるとともに、うつ病を引き起こす要因でもあるのです。言い換えれば、不眠とうつ病は互いに影響し合う、双方向の関係にあるといえます。
不眠が続くなら早めに病院へ
不眠が長く続く、もしくは不眠に加えて、気分の落ち込みや意欲・興味の低下などこれまでにない変調が続いているという場合は、早めに医師に相談してください。不眠症とうつ病のどちらなのか、もしくはその他の疾患が背景にあるのか、不眠の原因を明確にし、症状が悪化しないうちに治療を受けましょう。
<参考>
内田直『おもしろサイエンス 安眠の科学』日刊工業新聞社、2013年
内山真『不眠と不安に打ち克つ本』アーク出版、2004年
内山真『睡眠障害』家の光協会、2003年
内山真(睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会)編『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』じほう、2012年
田中匡『快眠と不眠のメカニズム』日刊工業新聞社、2007年
筒井末春「生活習慣病と睡眠障害」『心身健康科学』日本心身健康科学会、第4巻 2号、2008、p. 69-76.
アステラス製薬・サノフィ 快眠推進倶楽部
エスエス製薬 睡眠改善委員会 かくれ不眠ラボ「不眠がもたらすリスク」
エスエス製薬 ドリエル
MSD 快眠ジャパン
厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
武田薬品工業 体内時計.jp
田辺三菱製薬・吉富薬品 スイミンネット
養命酒製造 健康知識・情報「睡眠が変われば人生が変わる」