24時間型で生活リズムが乱れやすく、多忙でストレスが多い現代。その影響で不眠に悩まされている人は増えており、日本人の5人に1人が不眠や睡眠の悩みを抱えているという調査結果も出ているほど。
不眠は夜眠れなかったり、日中眠くてつらいだけではありません。慢性的な不眠は、糖尿病や高血圧などさまざまな病気のリスクを高めることが明らかになっており、命に関わる重大な問題なのです。
日頃、不眠を感じているなら、改めて自分の睡眠を見直してみてください。そして、眠りに関する正しい知識や生活習慣を身に付けて、快眠を目指しましょう。
そもそも不眠とは?
心配事がある時など、よく眠れないといったことは多くの人が経験したことがあるかと思います。数日間で解消する不眠なら問題ありません。
しかし、
- 1ヵ月以上にわたり、夜間の不眠が続く
- 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する
といった2つの条件が当てはまる場合は「不眠症」に該当し、治療が必要になる可能性があります。
ではどうして不眠になるのでしょうか。不眠はさまざまな要因が複合的に絡み合って生じると考えられています。不眠を引き起こす主な原因には、ストレスや不規則な生活による体内リズムの乱れなどが挙げられます。
不眠症の原因に関しては、「5人に1人が不眠に悩んでいる?不眠の症状と原因を解説」の記事で詳しく説明しているのでご覧ください。
眠りの悩みは「不眠症」以外にも
不眠症を始めとして、眠りに何らかの問題があり、長期間続いている状態を睡眠障害といいます。主な睡眠障害には次のようなものがあります。
代表的な睡眠障害
- 不眠症
- 過眠症
- 概日リズム睡眠障害
- 睡眠時無呼吸症候群
「眠れない」という悩みだけでなく、過眠症のように眠り過ぎてしまうといったケースもあり、眠りの悩みといっても、多岐にわたります。
睡眠障害の種類やそれぞれの特徴について、詳しく知りたい方は「不眠症だけじゃない!睡眠障害の種類と症状を知ろう」の記事をご覧ください。
眠りの悩みは世代で異なる
睡眠の悩みは個人差が大きいものですが、世代によっても特徴があります。
若年世代
インターネットやゲームを夜遅くまで行ったりして、不規則な生活で遅寝遅起きになりやすいのがこの世代。朝起きられず、学校に行けないなど、学業に支障をきたす場合も。
勤労世代
仕事や家事、育児などに忙しい世代。長時間労働や交代制勤務など、十分な睡眠時間を確保できなかったり、生活リズムが崩れやすく、睡眠不足になりがちです。
シニア世代
年齢とともに必要な睡眠時間は短くなってきます。それにも関わらず、若い頃と同じように眠ろうとして、眠くないのに床に就くと、かえって眠れず、不眠の原因に。また、仕事も引退し、体を動かすことが減るなど、不活発でメリハリのない生活も不眠を招きます。
世代ごとの眠りの悩みについて、詳しく知りたい方は「眠りの悩みは年齢とともに変わる!世代別の睡眠トラブルと対処法」をご覧ください。
女性ならではの睡眠障害
月経や妊娠・出産などを司る女性ホルモンは、女性の睡眠にも大きな影響を及ぼし、女性特有の睡眠障害を引き起こします。
月経前
月経前に起こる体や心の不調を「月経前症候群(PMS)」と呼びますが、そのPMSの症状として、強い眠気が起こることがあります。
妊娠中・出産後
妊娠中は女性ホルモンの影響で日中の眠気が強くなったり、出産後は夜間の授乳などで睡眠不足になりがちです。またホルモンバランスの急激な変化によって、情緒や睡眠が不安定になる「マタニティーブルー」に悩まされる人も目立ちます。
更年期
更年期はほてりやのぼせが起こりやすくなるため、寝つきが悪くなり、不眠を訴える人が増えます。また、うつ病が原因で不眠が起こっている可能性も考えられます。更年期は仕事や家庭などで大きな責任や負担を抱える時期であり、うつ病にかかる人が増えてくるので注意しましょう。
このように、女性の睡眠の悩みは年齢やライフステージによって、変わってきます。女性の睡眠障害については「ホルモンの影響で不眠が起こる?女性ならではの睡眠障害」の記事で、さらに詳しく説明しているので、ぜひご覧ください。
不眠は万病の元?
不眠は眠れなくてつらいだけではありません。不眠が続くと、さまざまな病気や不調を招く恐れがあります。
不眠に関連する主な病気や不調には、次のようなものがあります。
- 肥満
- 糖尿病や高血圧などの生活習慣病
- うつ病
忙しい現代人はつい睡眠をないがしろにしがちですが、不眠は命に関わる可能性があり、軽視できない問題なのです。
不眠と病気の関係について、さらに詳しく知りたい方は「不眠で生活習慣病のリスク上昇?気をつけたい4つの病気・不調」や「不眠=不眠症とは限らない?不眠とうつ病の深い関係」をご覧ください。
どんな治療法があるの?
眠れない状態が続き、日常生活に支障をきたす場合は、不眠症など何らかの睡眠障害の恐れがあります。
では、睡眠障害はどのような治療が行われるのでしょうか。主な治療法には以下のようなものがあります。
- 睡眠薬
- 睡眠衛生教育 …正しい知識と対処法を身につける
- 認知行動療法 …睡眠に対する誤った考え方や習慣を修正する
- 高照度光療法 …明るい光で体のリズムを整える
睡眠障害の治療というと、睡眠薬のイメージが強いかもしれませんが、それだけでなく、毎日の睡眠習慣を整えたり、正しい睡眠知識を身に付けることも非常に重要です。
また、睡眠薬だけに頼ったり、その反対に睡眠薬に抵抗があるからといって、薬を服用しないで無理に治そうとするのも考えもの。医師とよく相談し、それぞれの治療法のメリットやデメリットを理解した上で治療を受けるようにしましょう。
不眠の治療法について、詳しく知りたい方は「睡眠薬を使わない方法も 不眠の主な4つの治療法」の記事をご参考ください。
快眠のために気をつけたい生活習慣
睡眠で大切なのは時間よりも質。仮に8時間眠ったとしても、日中に眠気やだるさを感じるようなら、質のよい睡眠がとれてない可能性があります。また、必要な睡眠時間は個人によって異なり、一概に「最適なのは〇時間」とは言えません。
睡眠時間にこだわるよりも、
- 朝起きた時に「ぐっすり眠った」という満足感がある
- 日中、眠気や体のだるさを感じない
といった質の高い睡眠がとれているかが重要なのです。
眠りの質を高めるには、睡眠時間の確保だけでなく、生活習慣そのものを見直してみましょう。特に、ストレスや生活リズムの乱れは眠りに悪影響を及ぼすので要注意。そのほか、食生活や睡眠環境を整えることも大切です。
快眠のための生活習慣について、詳しく知りたい方は「正しい知識と生活習慣がカギ!快眠のために実践したい10のコツ」や「不眠解消には食習慣も重要! 快適な眠りのための食事のコツ」をご覧ください。
<参考>
内田直『おもしろサイエンス 安眠の科学』日刊工業新聞社、2013年
内山真『不眠と不安に打ち克つ本』アーク出版、2004年
内山真『睡眠障害』家の光協会、2003年
内山真(睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会)編『睡眠障害の対応と治療ガイドライン』じほう、2012年
田中匡『快眠と不眠のメカニズム』日刊工業新聞社、2007年
アステラス製薬・サノフィ 快眠推進倶楽部
エスエス製薬 ドリエル
MSD 快眠ジャパン
厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」
武田薬品工業 体内時計.jp
田辺三菱製薬・吉富薬品 スイミンネット
養命酒製造 健康知識・情報「睡眠が変われば人生が変わる」